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山口地方裁判所 昭和61年(わ)192号 判決 1987年11月13日

本店の所在地

山口県下関市細江町一丁目一番七号

法人の名称

株式会社福本電機商会

代表者の住所

山口県下関市山の田中央町五番六号

代表者の氏名

福本定夫こと 李定夫

本籍

韓国忠清北道永同郡龍山面九村里三五四番地

住居

山口県下関市山の田中央町五番六号

会社役員

福本定夫こと李定夫

一九四二年一二月二日生

右両名に対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官酒井徳矢出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社福本電機商会を罰金一五〇〇万円に

同 李定夫を懲役一〇月に

それぞれ処する。

訴訟費用は、被告人李定夫の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人株式会社福本電機商会は、山口県下関市細江町一丁目一番七号に本店を置き、時計・カメラ・電気製品等の卸売等を営むもの、被告人福本定夫こと李定夫は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、同被告人は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が八億三七五万三〇七四円で、これに対する法人税額が三億二九八三万七四〇〇円であったにもかかわらず、売上の一部を除外するなどして仮名及び無記名定期預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上、同五八年二月二四日下関市山の田町一番一八号所在の所轄下関税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六億七七五一万六五四一円で、これに対する法人税額が二億七六八一万七九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額五三〇一万九五〇〇円を免れ

第二  同五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が二億六一七九万四六一円で、これに対する法人税額が九八二〇万二〇〇〇円であったにもかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿した上、同五九年二月二九日前記下関税務署において同税務署長に対し、所得金額が二億四五一三万六三四二円で、これに対する法人税額が九一二〇万四一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額六九九万七九〇〇円を免れ

第三  同五九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が四三七二万六九二四円で、これに対する法人税額が三五七万二四〇〇円であったにもかかわらず、○○○の行為により所得を秘匿した上、同六〇年二月二八日前記下関税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三六万九八九五円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額三三五七万二四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示の全事実につき

一  被告人福本定夫こと李定夫の

(一)  当公判廷における供述

(二)  検察官に対する供述調書(二通)

(三)  大蔵事務官に対する質問てん末書(一七通)

(四)  作成にかかる上申書

一  後藤昇、野口寛一、山崎良太、柴田佳秋、李光雄、金万吉の検察官に対する各供述調書

一  兼松俊和、後藤昇、橋爪邦夫(三通)、柴田佳秋、李光雄、前田博史、金万吉、渡辺英子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官の

(一)  田原郁夫作成の現金調査書、貸付金調査書、売上高調査書

(二)  前正博作成の預金調査書、仮払金調査書、有価証券調査書、社長勘定調査書

(三)  小田実作成の価格変動準備金調査書、未払事業税調査書、臨検捜索てん末書、差押てん末書、領置てん末書

(四)  井林英人作成の預金有価証券等現在高調査てん末書

(五)  益池勝作成の領置てん末書

(六)  三見正信作成の領置てん末書

一  川崎幸夫、井上誠一(二通)、藤野正實、岩田金弘、佐藤俊夫、平田正直(二通)各作成の証明書

一  安再商、野口覚一各作成の上申書

一  押収してある銀行預金メモ一綴(昭和六一年押第九〇号符1)黒表紙メモ一綴(同押号符2)納品書一冊(同押号符3)請求書等綴一一綴(同押号符4)法人税決議書綴一綴(同押号符9)借用証二枚(同押号符13、14)

一  登記官金子昭典作成の法人登記簿

判示第一、第二の事実につき

一  渕上克彦の検察官に対する供述調書並びに大蔵事務官に対する質問てん末書

一  渡辺覚作成の証明書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官三見正信作成の脱税額計算書(検察官請求甲1)

一  被告人李定夫作成の昭和五八年二月二四日付法人税確定申告書謄本及び昭和六一年六月一一日付法人税修正申告書謄本(検察官請求甲7)

一  押収してある源泉徴収簿一綴(昭和六一年押第九〇号符6)元帳一綴(同押号符12)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官三見正信作成の脱税額計算書(検察官請求甲2)

一  被告人李定夫作成の昭和五九年二月二九日付法人税確定申告書謄本及び昭和六一年六月一一日付法人税修正申告書謄本(検察官請求甲8)

一  押収してある源泉徴収簿一綴(昭和六一年押第九〇号符7)元帳一綴(同押号符11)

判示第二、第三の事実につき

一  大橋寿弘の検察官に対する供述調書並びに大蔵事務官に対する質問てん末書

一  今成明作成の証明書

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官三見正信作成の脱税額計算書(検察官請求甲3)

一  被告人李定夫作成の昭和六〇年二月二八日付法人税確定申告書謄本及び同年六月一二日付法人税修正申告書謄本

一  押収してあるメモ一綴(昭和六一年押第九〇号符5)源泉徴収簿一綴(同押号符8)元帳一綴(同押号符10)

(法令の適用)

被告人会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条、七四条一項二号に、被告人李定夫の判示各所為はいずれも同法一五九条一項、七四条一項二号にそれぞれ該当するところ、被告人会社は法人であり、その情状により同法一五九条第二項所定の罰金刑で処罰することとし。被告人李定夫につき所定刑中懲役刑を選択し、以上は被告人毎に刑法四五条前段の併合罪であるから被告人会社につき同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人李定夫につき同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める判示第一の罪の刑に決定の加重をした刑期の範囲内で被告人会社を罰金一、五〇〇万円に、被告人李定夫を懲役一〇月に各処し訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項により被告人李定夫の負担とする。

(量刑事情)

被告人李定夫及び被告会社の前身である有限会社福本電機商会は、昭和五五年三月二二日法人税法違反で処罰され、被告人李定夫は懲役一年六月(執行猶予三年)右有限会社は罰金三、〇〇〇万円の判決を受けたにも拘らず本件は右執行猶予の期間中に犯行を開始したものでありそのほ脱額も合計六、三五八万円余というかなり高額であり、ほ脱の手段として売上金額の単価を圧縮して売上除外を行ないしかも売上除外した資金を仮名預金にして秘匿したものであり犯行の手段方法も巧妙で悪質な事案である。

被告人は、売上除外した動機につき、在庫商品の評価につき税務署か最終仕入原価法を遵守するよう指導し容易に評価減を認めないため企業防衛上本件を犯したもの、と供述するか税務署が被告人及び被告法人に対し法令に違反し特に不利益に評価減を否認したという証拠もなく、被告人自身資料を整え税務署に対し評価額を認容させるべく努力をした形跡も見当たらない。

しかし被告人李定夫は本件公訴事実の法人税違反事件に関し修正申告をなし法人税等の諸税を納付ずみであること会社の経理事務を改善し本件を反省していること等同被告人にとって有利な事情等をも十分考慮したうえ、主文のとおり量刑した次第である。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 中根輿志博)

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